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研究室紹介

研究分野とミッションステートメント:

『苦痛のない安全・安心・思いやりの医療』,『健康長寿や不老不死』といった全人類の果てなき大きな夢の推進や実現に貢献する。このためにIT技術,なかでもロボット技術を医療分野に展開して質の高い/革新的な医療機器を効率よく生み出すための方法論を医工融合の学術基盤として確立する。

われわれの開発する医療機器は,専門分化され,偏在・複雑化した高度な医療診断・治療技能/技術を一般的な医療従事者であってもきわめて容易かつ安全・安心に扱えるスマートなものとする。これにより世界中のだれもがどこにいても質の高い医療を安全・安心に享受するスマート医療インフラを構築,世界的規模での『超高度スマート医療社会』を実現・推進する。

具体的に医療ロボティクス・メカトロニクス分野において,医療技能の技術化・デジタル化(医デジ化)により医療技能をデジタル機能関数として機器側にとり込み,医療機器システム上で医療技能を高度・最適化するためのロボット機構・制御・画像処理・アルゴリズムの分野を開拓する。

(注)2016年度から5年間の科学技術基本政策の指針となる『科学技術基本計画』において,ITおよびロボット技術を駆使した『超スマート社会』の実現が主要な目標のひとつに掲げられている。

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/chukan/gaiyo.pdf#page=2

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon5/chukan/honbun.pdf#page=8


研究キーワード:

療技能の技術化・デジタル化 医デジ化

Technologizing and digitalizing medical professional skills

あるいは簡単に

Medical DigITalization (Me-DigIT,『IT』はIT技術(なかでもロボット技術)を基盤とすることを明示するため大文字化,Me-DigITはわれわれの研究プロジェクトの最重要のキーワードとして研究室ホームページのサブドメイン名にも採用)

(参考)
メディジット・インパクトによる医工融合ルネッサンスの勃興
Bio-Engineering Renaissance by Me-DigIT Impact(Me-DigIT Impact
『世界を変える医療システム・イノベーションはここから生まれる』

(コラム)
2045年に人工知能がヒトの知能を凌駕すると予測されている(カーツワイルが想定する2045年の技術的特異点)。これまで製造業分野においてロボットに求められてきた役割は,『定型的な作業を人間では不可能な精度および速度でこなすこと』であった。他方,医療分野において今後期待されるロボットは『これまでは人間にしかできないと思われてきた複雑で非定型な文脈や状況に対しても適切な判断および動作を高速・高精度かつ安全・安心に実行するとともに,医師の技能向上の仕組みを確保することで医療の質の向上を図りながら,新たな診断・治療の可能性を開拓する』ことであろう。


非侵襲超音波医療診断・治療統合システム
Non-invasive ultrasound theragnostic system (NIUTS)
患部(病巣)追従
Focal lesion servo (FLS)
強力集束超音波
High intensity focused ultrasound (HIFU)
超音波遠隔医療診断システム
Remote ultrasound diagnostic system (RUDS)
診断・治療統合
Thera(g)nostics = therapeutics + diagnostics
追従のための画像の質
Image Quality for Servo (IQS)
医療ロボット
Medical Robot(MR)
超音波診断ロボット
Ultrasound diagnostic robot(UDR)
超音波治療ロボット
Ultrasound therapeutic robot(UTR)
体動補償
Physiological motion compensation/canceling(PMC)

研究テーマ:

1. 非侵襲超音波診断・治療統合システムの構築法に関する研究
2. 遠隔超音波診断システムの構築法に関する研究
3. 超音波心臓癒着評価システムの構築法に関する研究
4. 非侵襲超音波痛み評価・治療統合システムの構築法に関する研究
5. 医療診断・治療技能の技術化・デジタル化に関する研究

Research themes:

1. Construction Methodology for Non-Invasive Ultrasound Theragnostic System
2. Construction Methodology for Remote Ultrasound Diagnostic System
3. Construction Methodology for Post Operative Pericardial Adhesion Evaluation System using Cardioechography
4. Construction Methodology for Pain Evaluation and Therapy System
5. Technologizing and Digitalizing Medical Therapeutic and Diagnostic Skills

アドミッションポリシー:

周囲を巻き込んで,時間をかけて自分の土俵と得意技(研究分野とコア技能・技術)をこしらえ,自分の土俵と得意技で勝負する勇気と気概をもつ人材を求めています。

具体的に,医療ロボティクス・メカトロニクス分野におけるシーズ(コア技能・技術,たとえば,機構・制御・画像処理・アルゴリズムおよびこれらの機能向上・最適化)に精通し,これを踏まえて,医療における,ニーズの開拓を行なう。また,ニーズを踏まえて,コア技能・技術を改良・発展,必要ならば新規開発することで,医療ロボティクス・メカトロニクス分野を開拓しようとする勇気と気概のある学生を求めています(わが国では医療に係わるシステム開発ができるIT,なかでもロボット(機構・制御・ビジョンおよびその機能向上・最適化)技術に精通する医工融合人材が強く求められているにもかかわらず圧倒的に不足しています)。 医療機器の世界市場は2013年の約40兆円から2018年には約56兆円に達するものと見込まれています。

学部での研究室選びや大学院への進学にあたって,われわれの研究プロジェクトへの参加に興味をもたれた方は下記のサイトからオープンキャンパス大学院オープンラボ等を通じてお申し込みください。スケジュールが合わない場合や研究プロジェクトについてさらに詳しく知りたい方は私の研究室まで直接お問い合わせください。研究室見学も随時受けつけています。

学部オープンキャンパス:
http://www.uec.ac.jp/admission/open-department/opencampus/
大学院オープンラボ: 
http://www.uec.ac.jp/admission/open-graduate/orientation.html
Me-Digit Lab (小泉研究室)のお問い合わせ先: 
http://www.medigit.mi.uec.ac.jp/toiawase.html

 

研究プロジェクトの概要:

患者に皮膚切開を加えることなく(非観血的に),ピンポイントで患部を診断・治療することができる強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound: HIFU) を用いた医療診断・治療技術は,既存の開腹手術や低侵襲手術の代替としてきわめて有望であり,近年,多くの研究が報告されている。 このうち,HIFUを利用した代表的なシステムとして,JC Haifu™システム,ExAblate™,ならびにSonablate™システム等があげられる。

JC Haifu™システムについては,さまざまなタイプの腫瘍を対象として計40,000例以上の臨床応用が報告されている。このようなHIFUを利用した既存のシステムに共通する主要な問題点の一つとして呼吸・拍動等による臓器の運動に対する補償が行なわれていないことがあげられる.そのため,たとえば,呼吸を制御した状態で治療を行なう必要があり,患者や医師への負担が大きくなる。

そこで,本研究では,呼吸・拍動等により能動的に運動する生体患部をロバストかつ高精度に抽出・追従・モニタリングしながら,超音波を集束させてピンポイントに患部へ照射することにより,がん組織や結石の治療を患者に皮膚切開を加えることなく非侵襲かつ低負担で行なう非侵襲超音波診断・治療統合システムを提案する。

(コラム)
体動補償システムが患部に精度よく追従できていれば,患部は超音波画像上であたかも静止しているかのように見える。これは,車の運転中に前(隣)の車に追尾(並走)していると,前(隣)の車が止まって見えるのと同様の原理である。静止した世界では,医療手技がきわめて容易なものとなる。

スポーツの世界では,鍛錬したアスリートが『ゾーン』に入ると時間の流れがスローに感じられるという。有名なエピソードとして巨人軍の川上哲治は打撃練習中に『ボールが止まって見える』という感覚に襲われたという(実際は当時人気のない球団に所属していた小鶴誠の発言だったらしいが)。

鍛錬すれば,同じ時間内にできることが格段に増えるため,相対的に時間の流れはきわめてゆっくりと感じられるのだという(時間を単位とするとこなせる作業量が増えるし,作業量を単位とすると時間が増えたように感じられるという一種の錯覚であろう)。またこの極限として,ある時間内に無限の作業量がこなせる超人を考えれば,この超人にとって世界はあたかも時が止まったかのように感じられる(錯覚される)ことも容易に想像できよう。

荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画のなかに,DIOという悪役が数秒間,時を静止させ,静的な世界の中で時間的・空間的に対戦相手を捕捉した状態で攻撃するという話があった。身動きのとれない静的な状態で対戦相手を攻撃することができるので,いともたやすく対戦相手に攻撃を命中させ,致命傷を与えてゆく(結局は同様の能力に目覚め,DIOよりもさらに長く時間を止められる主人公によって倒されてしまうのだが)。

運動・変形するターゲットを捕捉する方法には2つのアプローチ法がある。ひとつは,上記のように,システム側が超人的な高速さでタスクを遂行することで運動するターゲットを容易に捕捉しようとするもの(DIOあるいはカメレオン型)である。『ハイパーヒューマン技術』の提唱者である大阪大学の金子 真先生らの研究グループはこのようなアプローチからターゲットの捕捉システムを研究・開発している。

つぎに,2つめのアプローチ法として,ターゲットの運動・変形を同定し、同様の運動をシステム側にさせる方法(追尾・並走型)があり,われわれはこのアプローチ法を採用する。具体的にわれわれの体動補償技術を用いれば,ターゲットを容易に捕捉,これまで対象として扱われてこなかったような変形をともなって運動する(腎臓・肝臓・すい臓・心臓,肺,etc.)臓器に存在する腫瘍や結石を1mmというきわめて高精度で追従,これを補償しながらあたかも静止した世界で作業を行なう感覚で診断・治療手技を加えることが可能になる。

これにより診断・治療にもとめられる手技のハードルが大きく引き下げられ,さまざまな診断・治療法およびこのための医療機器の普及がわれわれの体動補償技術により大きく促進されるものと強く期待されている。

図に関連する他の患部追従手法と提案手法の比較表を示す。具体的に,超音波を利用した患部追従手法はX線CTやMRIによる手法と比較して以下の3つの利点を有する。
 (1)超音波の高リアルタイム性による患部運動補償精度の向上。
 (2)患部を剛体ではなく,粘弾性体として組織変形を含めたモニタリングが可能。
 また,超音波を利用した,他の手法と比較しても我々の手法は以下の利点を有する。
 (3)患部とHIFUの焦点は常時一致し、HIFU照射の効率が高く、安全性も高い。

他の患部追従手法と提案手法の比較表

(コラム)
超音波治療のためのモニタリング手段として同じく超音波を利用することには利点がある。たとえば,診断用超音波も治療用超音波も同じ超音波なので,媒質中の音速は等しい。そのため,同定された超音波画像上の患部位置と実際の物理的な患部位置とのずれが存在したとしても,診断用超音波を照射する際も治療用超音波を照射する際も等しくずれるため,これを考慮しなくても良い点である。すなわち,超音波画像上で同定された患部位置に,同じく超音波画像上で音圧センサ等を用いて同定されたHIFU焦点位置を合わせればよいのである。

本研究では,超音波医療診断・治療支援システムを構築するにあたって『医デジ化』という,独自のシステム構築論に基づいて行なう。医デジ化とは,医療診断・治療における技能を機能として抽出,分解・再構築(構造化)し,これを定量的に解析し,さらに関数としてシステムの機構・制御・画像処理アルゴリズム上に実装することで,医療支援システムの開発に利用しようとするものである。

具体的に,高齢化社会,健康志向社会,情報化社会を背景にして,医療サービス(生活)の質の向上が強く求められている。しかしながら,患者数が増大する一方で,個々の診断・治療技能に精通した医療専門家の数は非常に限られている。そこで,本研究では,医療診断・治療サービスを高度な超音波技術・ITおよびロボット(IRT)技術の最大の出口として捉え,『医デジ化に基づく超音波医療診断・治療システムの構築法に関する研究』を推進している。

本研究の具体的な対象として,下記の7点がある: (i) がん(腎がん,乳がん,肝がん,胆のうがん,すい臓がん,骨腫瘍,  etc.)の診断・治療(基礎~応用研究段階,日立アロカメディカル(株),etc.との共同研究), (ii) 結石(腎結石・膀胱結石・肝結石・胆石・すい石, etc.)の診断・治療(応用~臨床研究段階,東大泌尿器科との共同研究), (iii) 痛み(透析肩痛,腰痛,関節痛,etc..)の診断・治療(基礎研究段階,産総研,高知大学医学部,愛知医大との共同研究), (iv) 内臓脂肪(メタボリックシンドローム)評価(臨床研究段階,日立アロカメディカル(株),東大代謝内科,消化器内科との共同研究) (v) 循環器疾患・組織癒着(血栓,心臓癒着,腹部癒着)評価・治療(応用~臨床研究段階,ニプロ(株)との共同研究), (vi) 生体組織の粘弾性測定, (vii) 超音波ガイド下での穿刺生検やラジオ波による治療。

本研究の背景は2点ある。1点めは,強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)による非侵襲超音波治療技術の顕著な発達である。これは,球面型の超音波振動子を用いて超音波を集束させることにより,周りの体組織に損傷を与えることなく,体内の狭い領域にエネルギーを集中させるというものであり,正常な組織を損傷させることなくピンポイントに患部のみを治療することができる。

2点めは,ITおよびロボット(IRT)技術を利用して人間の熟練した技能を再構築する,言わば“技能の技術化・デジタル化”がテクノロジーの発達とともに可能になりつつあることである。すでに製造業分野では,人間の能力のみでは不可能な高速・高精度の作業がロボット技術の利用により実現されている。

高度な技能を要求される超音波医療分野においても医療ロボットの開発により,熟練した医療専門家のように人体に対して安全・安心に(接触あるいは非接触)動作するとともに,人間の能力を超える,高精度な診断・治療を実現することが期待されている。このようなシステムを構築するにあたっては,専門医の超音波医療診断・治療技能をロボットがただ単に模倣するだけでは不十分である。

超音波医療診断・治療対象である患部を,その機械特性,運動特性,並びに音響特性さえも考慮して,モデル化し,システム側に実装したうえで,医療専門家の技能を診断・治療機能として抽出,分解・再構築(構造化)し,関数(医師の診断・治療モデル)としてシステムの機構・制御・画像処理・アルゴリズム上に実装(医デジ化)することが必須である。

その際,必要ならば医療専門家の医療技能に啓発された全く新しいアプローチから機能を追加・実装することによって,医療の質の向上(高速・高精度化)を図る。これまでに,下記の5つのコア要素技術を基盤として,これを改良・発展させてきた(図に,例として非侵襲超音波診断・治療統合システムの研究ロードマップを示す)。

(コア技術I) 人体に対する安全・安心接触/非接触動作技術(IEEE/ASME Trans. Mechatronics(メカトロニクス分野のトップジャーナル)への論文掲載

(コア技術II) 機能に応じた高精度機構設計技術(IEEE Trans. Robotics(ロボティクス分野のトップジャーナル)への論文掲載

(コア技術III) 超音波医療診断・治療技能における機能抽出・構造化技術(IEEE Trans. Robotics(ロボティクス分野のトップジャーナル)への論文掲載

(コア技術IV) 超音波診断・治療タスクに応じたシステム動作切替え技術(IEEE Trans. on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control (超音波制御分野のトップジャーナル)への論文掲載

(コア技術V) リアルタイム医用超音波画像処理技術(International Journal of Medical Robotics and Computer Assisted Surgery (医療ロボット分野の国際一流誌)への論文掲載

具体的に,例えば,位置・姿勢の正確さが要求される超音波プローブや治療用超音波照射機器を動作させる機能には,人間のようなアーム型の機構ではなく,直動ガイドおよび曲率ガイドによる剛性の高い機構を用いてハードウェア・システムを実装するべきであり,このように機能に応じて高精度な機構を設計する技術,人が人にやさしく接するように超音波診断・治療機器を人体にとって安全・安心に動作させる制御技術など,医療技能の技術化・デジタル化を実現するにあたって強力な武器となるべき独自のコア(核)技術を世界にさきがけて開発・蓄積しつつあり,医療機器産業分野における有望な将来技術になるものと期待している。

医デジ化にもとづく非侵襲超音波診断・治療統合システム構築のロードマップ

(コラム)
何事においても,敵を知り,己を知れば百戦危うからずで,ものごと(システム)の固有値,固有ベクトルを把握して,これに基づいて行動計画を立てることが効率的に物事をすすめるうえで有効であろう。

医療ロボットを構築するうえでの固有ベクトルは,さきほど挙げた,①機構,②制御,③画像処理アルゴリズムの3つで,医療ロボットの主成分を分析すれば,上記3つがまずでてくるであろう,,,

さらに,今後上記の3つに食い込んでゆくのが④機能向上・最適化のための機械学習かもしれない,,,とくにベイズ理論関係か,,,

 前述のように,本システムの主要な診断・治療対象として,『がん』と『結石』がある.本研究では,まず,『(腎)結石』が追従できることを目標とした。これは,結石は超音波画像上で輝度が高いため位置の同定がしやすいと考えたからである。

具体的に,まず,超音波画像上で結石を自動検出するアルゴリズムを提案し,治療の精度およびモニタリングのために,集束超音波の照射によるノイズの存在下においても,患部である結石の正確な追跡を可能とする画期的な方法を提案した。

さらに,追従性能を極限まで高めるために,ターゲットの運動の周期的な成分をモデル化して,これをフィード・フォワード項として与える制御法を提案した。最後に,モデル結石および動物摘出腎を用いた患部追従・HIFU照射による破砕実験を行ない,2.5mmの追従精度を実現した。


上記のように,『結石』の追従がある程度できるようになってきたので,次の目標として,『(腎)がん』についても対象にしようということになった。しかしながら,がんには,超音波画像上で結石のように輝度が高いという目印がない。そこで,腎臓の形状(輪郭)情報やテクスチャ(模様)情報を利用することにした。

輪郭情報を利用した方法では,まず,CT等により,腫瘍の形状モデルまでも組込んだ,3次元腎臓モデルを構築し,これと,時々刻々と入力されるステレオの超音波画像とをレジストレーションすることで,間接的な患部位置同定法を実現している。

また,レジストレーションの際に,3次元モデルから生成した輪郭(seed points)情報をステレオ超音波画像における輪郭抽出に利用することで,計算時間を大幅に短縮する画期的な手法を提案し,これにより,従来型のレジストレーション手法では,これまで不可能であったリアルタイム(20Hz)での患部追従を実現し,2.5mmの追従精度を実現している。

さらに,同定された輪郭情報と3次元腎臓モデルから,患部の位置のみならず,姿勢情報さえも同定する手法を提案した。図に腎がんを対象とする患部追従・HIFU照射実験(ファントム実験)の様子を示す。


3次元腎臓モデルと,ステレオの超音波画像とのレジストレーション

腎がんを対象とする患部追従・HIFU照射実験(ファントム実験)


テクスチャ情報を利用した方法では,腎臓の超音波画像においてノイズ以外に画像パターンを変化させる要因としては,肋骨による音響シャドウ,臓器の変形,腎臓の画像平面に垂直な方向への運動等があり,これが追従失敗の主要な原因となる。

そこで本研究では,上記画像パターンの変化に対してロバストな画期的な追従手法を提案した。具体的に,提案するロバストテンプレートマッチング法のコンセプトは,画像パターンの変化量を見積もり,変化の大きな領域をテンプレートから除去しようというものである。

処理の流れを図に示す。治療前に腎臓の超音波動画像を取得し,動画の最初のフレーム(テンプレート)と他のフレームの差分画像を計算することで画像パターンの変化量を見積もる。超音波画像上でテンプレートとして選択した領域と,処理後のテンプレートの一例を図に示す。

現在,本手法を利用して,ヒトを対象とする次世代改良機を開発中であり,2.5mmの追従精度を実現している(図)。

ロバストテンプレートマッチング法の処理のながれ

ヒトの腎臓にロバストに追従する次世代改良機の開発


現在のところ,まずは,腎がん・腎結石に対象を絞り,マンパワーを集中した深堀研究を行っているが,本研究の波及効果は幅広い。なかでも,生体患部の運動補償技術(特許第5311392号,PCT/JP2015/075132)は極めて有望な扇の要となる技術と位置づけており,今後は,これに関する深堀研究を行なうと同時に,本技術の適用対象を広げ,縦横に研究展開してゆく計画である。

具体的に,腎がんや腎結石(応用~臨床研究段階)のみならず,今後は,乳がん,肝がん,胆のうがん,すい臓がん,骨腫瘍,膀胱結石,肝結石,胆石,すい石等にも適用の幅を広げてゆくことが期待されている(基礎~応用研究段階)。また,超音波による内臓脂肪量計測における精度向上(臨床研究段階,東大病院,日立アロカとの共同研究)にも,本研究・技術の応用は強く期待されている.さらに,本研究は,X線,陽子線,重粒子線,ならびに中性子線といった,最先端のがん治療とも共通の技術課題を有していることから,日立製作所の重粒子線研究開発チーム等と意見交換を進めている。

その他,透析肩の診断(応用~臨床研究段階,岡山大学整形外科との共同研究),心臓癒着評価をはじめとする心臓機能評価(応用~臨床研究段階,東大心臓外科との共同研究,特願2011-027806),血栓などの循環器疾患の診断・治療、腰痛・関節痛などの痛みの評価・治療(産総研,高知大学医学部,愛知医大との共同研究),超音波ガイド下での穿刺生検やラジオ波による治療における体動補償にも本技術が応用展開できるものと期待している。

研究室紹介

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